ベトナム最後の王朝である阮(グエン)朝の都として栄えたベトナム中部の古都・フエ。
フォン川(香江)を挟んで、新市街の対岸にある旧市街に王宮、寺院、博物館などの建造物が点在しており、1993年にベトナム初の世界遺産として登録されています。
フエの建造物群の解説・紹介
フエは、1558年以降、広南阮氏の本拠地となり、タイソン朝による中断の後、フランスの援助を受けて、ベトナムを統一したザーロン帝が1802年に創設した阮(グエン)朝の都となっています。
以降、阮(グエン)朝は1945年まで13代143年間にわたって続きました。
「ベトナムの京都」とも称されるフエは、フォン川(香江)を挟んで旧市街と新市街に分かれており、当時の建築物や阮(グエン)朝の歴代皇帝の陵墓が点在しています。
旧市街は碁盤の目状の方形となっており、南側に世界遺産の王宮南門、宮殿、帝廟などがあります。
また、園宅(ニャーヴオン)と呼ばれる旧貴族・皇族の住宅も残されており、首里城や京都御所のような佇まいがあります。遺産規模は520haに及んでいます。
中国、フランス、ベトナム独自の建築スタイルの混合
中国、フランス、それにベトナム独自のスタイルが交じり合って建立されたフエ王宮をはじめ、グエン朝第4代皇帝のトゥ・ドゥック帝廟、グエン朝第12代皇帝のカイディン帝廟など歴代皇帝廟、あるいは高さ21mの7層8角のトゥニャン塔を持つティエン・ムー寺院、ホンチェン寺院、城壁などのモニュメントが残されています。
フエ市に点在する建築群の建築様式からは、歴代皇帝の志向や歴史的背景を見ることができます。
残念なことに、ベトナム戦争の激戦地となったため、多くの建物が破壊されてしまいましたが、現在、復元に向けて調査などが行われています。
フエの建造物群の詳細地図
旧市街の中心に広がる壮麗なフエ王宮
旧市街の中心に広がるフエ王宮(Đại Nội Huế)は、中国の紫禁城(故宮)をもとに1805年から嘉隆帝(ザロン帝)が建設に着手。2代ミンマン帝の時代に完成しています。
フエ市内のどこからも見えるフエ王宮前のフラッグタワーは、かつての見張り台で、フエのシンボル的存在。入場料を払わなくても見学できます。
フラッグタワーの前には「牛門」(王宮門 / Ngọ Môn)があり、チケット売り場を兼ねています。ここから王宮に入ることができます。
鳳凰をかたどった楼閣を持つ「牛門」(王宮門 / Ngọ Môn)をくぐると、正面に皇帝の即位式が行われた太和殿があります。随所に龍の装飾が施されており、中国の影響が窺われます。
フエ王宮内には、グエン朝の菩提寺である顕臨閣や歴代皇帝を祀った世祖廟などベトナムの伝統的な建築様式の建築物もあります。
赤い回廊はインスタグラム映えするスポットとして人気です。フエ王宮内では、宮廷音楽を鑑賞できたり、宮廷衣装をレンタルをして写真撮影を行うこともできます。
フエ王宮の城郭は、フランス帰りの建築家、黎文学(レー・ヴァン・ホク)が設計したもので、五稜郭と同じフランス式の星型をしており、ヴォーバン様式と呼ばるものです。夜間は美しくライトアップされます。
フエ王宮は見どころが多いため、じっくり見て回ると、2時間以上かかりますが、王宮内には、お茶をできるカフェも数か所あり、ベトナム式コーヒーを飲みながら、ゆっくりと休むこともできます。
- 住所
- フエ市中央
- 営業時間
- 夏期 06:30~17:30
冬期 07:00~17:00 - 入場料
- 大人150.000ドン、12歳以下30.000ドン
カイディン帝廟
フエ郊外のフォン川沿いには、歴代皇帝の廟や1601年に創建されたティエンムー寺等が点在しています。
中でも、カイディン帝廟(Lăng Khải Định)は、阮(グエン)朝の最後から二番目にあたる12代皇帝カイディン帝の帝廟です。
カイディン帝廟は1920年から建造され始めましたが、当時、ベトナムはフランス統治下にあり、またカイディン帝自らがフランス文化に強い興味を抱いていたため、中国様式に加えて、フランス様式が取り入れられています。
急な石階段を上ると、フランスと中国の建築様式を混合したような石造りの帝廟が見えます。
カイディン帝廟の入口には、石造りの人間や象や馬をかたどった像がお墓を守るように設置されています。
カイディン帝廟の見どころは、黄金に輝くきらびやかな部屋です。陶器やビンなどの破片で制作されたモザイク画など、過剰とも言えるほど華美な作りです。
- 住所
- Khải Định, Thủy Bằng, Hương Thủy, Thừa Thiên Huế
- 営業時間
- 夏期 06:30~17:30
冬期 07:00~17:00 - 入場料
- 大人150.000ドン、12歳以下30.000ドン
トゥドゥック帝廟
トゥドゥック帝廟(Lăng Tự Đức)は、フエ郊外にあるる阮(グエン)朝第4代皇帝トゥドゥック帝の廟です。
第4代トゥドゥック帝の時代は、阮(グエン)朝の安定期にあたり、中国様式の影響が強い廟です。
トゥドゥック帝の生前に離宮として建設され、トゥドゥック帝の死後は帝廟となっています。
比較的、こじんまりとした廟ですが、高い木々が生い茂った敷地内には大きな池があり、公園のような佇まいです。
赤茶色の瓦屋根を頂いた木造の「月見殿」が蓮池に面しており、非常に趣のある作りで、まさに日本人がイメージする古都の雰囲気を強く漂わせています。
フランスの宮殿風のきらびやかなカイディン帝廟とは大きく異なる姿を見せています。
- 住所
- Thôn Thượng Ba, Thành phố Huế, Thừa Thiên Huế
- 営業時間
- 夏期 06:30~17:30
冬期 07:00~17:00 - 入場料
- 大人100.000ドン、12歳以下20.000ドン
フエの建造物群の概要
- 名称 / 英語名
- フエの建造物群 / Complex of Hue Monuments
- 種別
- 文化遺産
- 登録基準
-
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。 - 登録年
- 1993年
- 公式サイト
- ユネスコ / UNESCO 公式サイト内の Complex of Hue Monuments ページ